伝統の郷土寿し【鱒のすし】
洒落た容器に熊笹の葉
鮮やかなピンク色した富山の味

その起源は遠く享保二年(1717年)割烹の術に秀でていた富山藩士「吉村新八」が初めてつくったと言われ、三代藩主「前田利興」に献じたところ、大変お喜びになられ、吉村新八に鱒寿し漬役をお命じになられました。
時の将軍徳川吉宗公に献上したところ、激賞を受け、富山の名物となって今日に至っています。
鱒寿しは、薄く切った鱒と良質の富山米を材料にした押し寿しの一種ですが、淡いピンクの淡泊な鱒の風味を白いご飯にゆきわたらせ、熊笹の葉でつつみきりっとひきしまった鱒寿しのうまさは、風情ある曲げわっぱの容器とともに多くの方に好評を呼び「富山へ行ったら鱒寿しを」といわれるほどです。


 
人と自然の傑作・富山米
水の王国・富山
水が育む多彩な美味
米と魚が出合ってすしは生まれた
おいしい食べ方
鱒の寿しの製造過程




人と自然の傑作・富山米
 そもそも、よい米がとれる基本的な条件は
1. 夏に昼と夜の温度差があること。
 (この差により米の糖度が上がり、いわゆる甘味のある米になる)
2. 山沿いで、山からのきれいな水があるところ。

とされ、この条件が満たされる場所ではうまい米が育つと言われています。
富山県は三千メートル級の北アルプスから流れ出る豊かな清流と、肥沃な扇状地に恵まれた全国屈指の米の生産県です。
県内のどの産地も、よい米が育つための条件を満たし、富山米のおいしさは全国的にも高く評価されています。
しかし、自然条件もさることながら、米づくりの要はつくり手の心意気です。
農家の深い愛情と確かな技術が、富山米のうまさの基本。
富山米はまさに自然と人が生んだ傑作なのです。

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水の王国・富山
富山県は東部に立山連峰がそびえ、南部は飛騨の山々へ続き、中央から西部にかけては丘陵性山地となっており、北は富山湾に面しています。
富山の平野はこれらの山々を源として流れ出す大小約300の河川によって形成された扇状地。富山の大地はまさに水がつくり出したのです。
また、富山県は日本海側特有の降雨、降雪地帯。
とくに冬期間の降雪が多く、山岳部の積雪は”雪のダム”となるのです。
なかでも万年雪をいただく立山連峰は自然の大貯水池として、真夏でも冷たく豊かな水を富山の人と大地にもたらしてくれます。
環境庁が選定した「名水百選」には、全国でも最も多い四カ所が指定されており、富山県は質量ともに水の王国と呼ぶにふさわしいところです。

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水が育む多彩な美味
豊かな水は、水力発電、工業用水、農業にと幅広く活用されてきましたが、なによりも多彩な美味を育んできました。
鱒の寿しに欠かせない富山米は水と大地のたまもの。
米ならずリンゴ、ナシ、カキ、スイカなど、数々の特産果実や野菜も水と大地の恵みです。
また、水道をひねればミネラルウォーターが出るとまで言われる富山の水は全国で販売されています。
地酒の銘品が数多いことも、良質な酒米と清涼な水に恵まれていることを物語っています。

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米と魚が出合ってすしは生まれた
すしは米を使ったうまいものの代表格。
しかしその起源をたどると、今とはずいぶん趣きの異なる食べ物だったようです。
平安時代の記録では、すしとは飯と魚介類をなじませ、飯の乳酸発酵によって魚介類の腐敗を防いだ一種の漬物。
こうした手法を現代に伝えているのが滋賀県の「ふなずし」です。
すしはまず魚の保存法として誕生。室町時代に漬け込みの途中ですしを食べることが始まり、酢を使うすしが現われたのは江戸時代はじめ。元禄の頃には酢を加えることが一般的になったようです。
今日では、ふなずしのような古代ずしを「なれずし」と呼び、その食べごろを早めるため酢を加えたのが始まりと思われる酢を使うすしを「早ずし」と呼びます。
富山の鱒のすしは、この「早ずし」の一種なのです。

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おいしい食べ方
蓋の方を台にして笹皮のまま蓋の上においてください。
お好みに合わせて6ツ切、8ツ切に。
おいしい風味は二日間ですが、お早くお召し上がりください。
冬季は暖房、夏季は冷房のある場所においてください。
30度近い気温の場合は、冷蔵庫で1〜2時間位冷やしてからお召し上がりください。

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鱒の寿しの製造過程
1. 2kgから6kgくらいの鱒を三枚に開きます。
2. 丹尺形にして、より的確に切ります。
3. 切り身を食塩水に浸し、時間を置いてから水洗いします。
4. 配合された醸造酢に浸します。
5. 炊きあげたご飯に食塩、砂糖、食酢をブレンドした甘酢を
  程好く攪拌し冷まします。
6. 熱湯で消毒後、水洗いした熊笹(その年の盛夏に
  採集したもの)をわっぱに敷いて、ご飯、鱒を入れます。
7. 青石でゆっくりと押します。(10分ほど、適度17度)
8. 青竹ではさんで、お土産となります。

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